SUKOYAKA日記

メモ帳的存在。岡山在住。

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モリのアサガオ 郷田マモラ 8点

(全巻を読んでレビュー。下のほうに三巻までのレビューあり。)

テレビをつけると北野武が映画の撮影方法について語っていた。

「見る側の想像力を利用するようにしている。『お前へんな顔しているな』というシーンで、あえてへんな顔をしている役者の背中を映す。そうすれば、見る人はそれぞれの理想的な変な顔をイメージできる。」

インタビューでこの部分がもっとも印象に残った。それは以前に郷田マモヲの「モリのアサガオ」という漫画で同じことをを感じていたからだ。彼の絵はシンプルさが追求されていて、記号化されている。喜怒哀楽の感情を限りなくシンプルに描くことで、読み手はそれぞれのイメージを絵に上塗りでき、まさに北野武が語っている「それぞれの理想」が実現される。

受け手に想像させることに関しては、小説が一番長けている。文字ですべてを伝えるからだ。「美しい女」と書けば、それぞれの『美しい女』を想像できる。
しかし欠点もある。それはわざとらしさだ。文字だけで伝えるという性質上、すべての事柄を明記しなければならない。表現方法は無限にあり、工夫もこなされているが、少ない文字で伝えきるのは難しい。

「モリのアサガオ」のシンプルな絵柄はその「わざとらしさ」を避け「死刑」という繊細なテーマをうまく処理している。

感想とネタばれ。テレビドラマをみてる人で、続きを知りたくない人は読まないほうがいいです。




まさか及川が山本憲人という人の養子とは思わなかった。及川は、初回に死刑囚に山本と勘違いされ、別の回では気の狂った元刑務官にも同様に山本と呼ばれる。明らかに伏線だとわかるシーンだが、死刑の是非や他の事件に集中していて、気付かなかった。
そしてまさか、山本は元死刑囚で、態度の悪い死刑囚の深堀と共犯で捕まったなんて考えられなかった。山本は及川のように元刑務官だったのでは?とミスリーディングを誘う仕組みがあり、それが裏切られた時一人で「なんだよこの展開・・・」と呟いてしまった。
重いテーマを扱った漫画によくある「ストーリー自体の魅力不足」はこの漫画には見られなく、全8巻ともすんなり読めた。

印象に残っているのは、星山の改心と深堀の死刑直前の遺書。

子供の頃、親の愛を十分に得られなかった星山。ある日、幸せそうな一家全員を殺してしまう。事件を思い出してしまえば、子供のころのつらい過去と、自分が望んでいた家族というものを壊してしまったという呵責に苛まれる。そうして星山は横暴な態度をとっていたが、自分の過去と被害者を見つめることで、罪の大きさに気付き、改心する。偶然か必然か、その数日後には死刑執行命令がくだる・・・。


深堀の遺書は小学生が書いたもののように幼稚だった。地獄の「ごく」の字はひらがなだったし、字も汚い。だが、犯行に対する反省、及川への感謝、残された娘への愛が伝わってきた。思わず目頭が熱くなった。


最終的に、刑務官及川は死刑は必要だという結論に達する。ただいくつか改善すべきところも挙げられていた。冤罪への配慮、死刑囚の精神的なサポート徹底などだ。これは多分、作者自身が取材を重ねて得た結論だと思う。
ただ、作者自身まだ明確な結論を出せていないということが、及川の独白から伝わる。

及川はまだ「死刑というモリ」を抜け出せてはいない・・・。





3巻まで読んだレビュー。

「死刑」という重いテーマを扱ったマンガ。作者は検死、裁判員制度、臨床心理など重いテーマに漫画を描いてきているだけあってうまい。どんどん引き込まれていく。
切り絵のようなシンプルな絵柄だけれど、そのおかげで描写に想像の余地が残されてて、良い効果をもたらしている。
pic_manga00_l[1]

左の男が主人公で、新人刑務官の及川。職務についてすぐは、死刑制度に疑うこともなく、死刑確定犯を血も涙もない凶悪な人間だと信じている。しかし収容者の改心や、業務で死刑を実際に目の当たりにする中で、考えが変わっていく。及川は小学校のころから右の死刑囚である渡瀬を知っており、親近感を抱いている。また復讐を果たした強い信念にあこがれている。



死刑囚の渡瀬。彼は、彼の家族を殺した男の出所後、復讐を果たす。その時刀で切りつけたときに彼の抱えていた娘も切りつけてしまい、二人殺害してしまい死刑となる。

感想。
面白い。収容所で起こるエピソードがそれぞれしっかりとした起承転結を通して、1・2話でまとめられている。
しかも数話完結型のマンガにありがちな、ご都合主義が無くて、引き込まれる。
今4巻を読んでいて、残り3巻。ちょうど主人公は渡瀬との関係を持ち始め、死刑にも疑いを感じてきたころ。これからが楽しみ。



死刑については、私は明確な立場を打ち出せていない。あるべきだと思う気持ちもあれば、なくすべきと思う気持ちもある。殺人者といえども、国家が行うとしても、死刑は殺人であることに間違いはない。刑の執行前に改心する囚人もいるだろうし、渡瀬のように家族を殺されたという、同情の余地のある人物もいる。しかしそれは死刑廃止を直接意味しない。

死刑を廃止するにあたって考えることは大きく3つだと思う。他にもいろいろあるようだけど、私が大きなポイントだと思うのはこの3つ。
一つは抑止力、2つ目は冤罪、そして被害者の感情

抑止力に対して反論があるのは事実だ。
A実際に殺人を犯した人間は、死刑のことなど考えていなかったという調査結果がある。
B死刑を採用した国では、その年の殺人は減らなかった。
Cアメリカでは自殺したいがために死刑のある国で殺人を犯す人間がいた。


Aに関して言えば、当然のことを言うな、殺人犯以外の人間のことをこの調査は無視している。今普通に生活を送っている人で、死刑のおかげで殺人を思いとどまった人間はどれだけいるだろうか。調査をしてみないとわからないが、一で挙げられている調査結果が意味のないものということは明らかだ。

Bは、興味深いデータだが、甘い。犯罪率はさまざまな条件によって変動する。政治的要因や経済要因によって犯罪率は大きく変化する。だから景気が上向きのときは、殺人は減るし、逆の時は増える。そのような条件も加味しないで、単に「変わらなかった」とするだけでは、死刑の抑止力の是非はわからない。

Cは、それで?、だ。もし死刑に抑止力があるとしたら、このような馬鹿げた行為で死刑廃止を訴えることは、おかしなことだ。おそらく反対派が絞り出した情報で実際に行われた数は少ないだろう。数が多かったとしたら、そのような犯罪だった場合、元の州の法律で裁くなどの解決策はある。

次に冤罪について。冤罪で死刑判決になったものはどうするのか、というものだ。

これは法治国家の否定だ。冤罪を恐れて、刑そのものの廃止を訴えるのは、飛躍のしすぎだ。その論理だと、どの刑罰も廃止しなければ無くなってしまう。冤罪を恐れるのであれば、冤罪をなくす方法を探っていくのが、本来取られるべき行動だろう。

最後に被害者の感情について。
ここまでの二つと打って変わって、これは死刑廃止側の論理を紹介する。
死刑存置論者がよく使う論法で「死刑廃止って言ってるけど、どうせお前の家族が殺されたら犯人の死を望むんだろ?」ってのがある。私なら「はい。思います。ですが、それが死刑の存在理由にはならない」と答えるだろう。だって被害者側の感情=刑の重さにすると、他の軽いな罪でも死刑になってしまうだろう。たとえば財布を盗んだひったくりに対しては、「死んでもいい」と思う人は多いだろうし、恋人や家族を故意に誰かが傷つけた場合も、大半の人が「死を望む」だろう。だから被害者側になったら死刑を主張するんだろ?っていう反論は意味をなさない。

おわり。
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  • posted by  
  •  
  • 2012.09/28 04:47分 
  • [Edit]

NoTitle 

怖いよー
  • posted by 大輝 
  • URL 
  • 2013.03/31 15:16分 
  • [Edit]

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